おジャ魔女どれみ観賞
後半です。
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その後、お父さんとおじいちゃんのおかげでどれみ達は山から無事帰ってくる。
みんなで夕飯を食べている際、ごはんを食べ終わったあいこにももこが「おじいちゃんの膝の上に座らせてもらってきなよ?」と目配せをする。
恥ずかしそうにするあいこ。
見ると、おじいちゃんは笑いながらバンと膝を叩いて「おいで」をする。
大喜びで膝の上に座る。
「座りごこち最高や!」
楽しそうにあいこは笑う。
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良かったなぁあいこぉぉぉぉ!
と心の叫びを思わずセンタリングしてしまう程に感動的な、あいこがおじいちゃんへの恐怖心を払拭できたこの場面。泣けます。
だいたい、あんなあいこを泣かせるような妖怪ヅラじじいのコトなんてさっさと記憶の彼方に吹っ飛ばしてしまえばいいんですよ(←かなり偏った意見)。
ただし、この作品のテーマは、決してあいこがおじいちゃんへの恐怖心を取り除くことでありません。この場面で芽生えたあいこの「おじいちゃん好き」という気持ち、これを生かして、真のテーマが控えています。
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ふとあいこは、おじいちゃんの手を見る。
「おじいちゃんホクロ一杯あんねんな」
「ああ。これはお迎えボクロといってな、もうすぐあの世からお迎えがくる印なんじゃよ」
手に落ちる涙。あいこはおじいちゃんに抱きつき叫ぶ。
「おじいちゃあーん!
そんなこと言わんと長生きしてーな!」
たまらずどれみも駆け寄る。
「おじいちゃん死なないで!」
ぽっぷもお母さんにしがみ付いて言う。
「あの世なんか行かないで!」
はづきも、おんぷも、ももこも、涙を流す。
そしておじいちゃんは二人を抱きしめ、震える声で、しかしはっきりと答える。
「すまなんだなあ…。
また来年も再来年もみんなに来てもらえるように長生きせんとなあ」
(T▽T)
血の涙
うおおおお何だこの目から溢れ出るものは!?
涙だよ!!(←思わず自分ツッコミ)
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いやもぉ、あいこもどれももみんな良いけど特におじいちゃんアンタ最高だよ!台詞カッコ良過ぎだよ!声の震え方とかマジで泣けるよ!たてかべ和也万歳!『たてかべ和也=ジャイアン』しか知らなかったヤツは自分を恥じろ!
ごめんなさい!(←お前もか)
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(急に冷静になって)この作品中で最も重要なのは、「おじいちゃん好き」という気持ちを抱くことによって生まれる
「おじいちゃん死んじゃやだ」
という気持ちです。あいこのエピソードは、「おじいちゃん好き」という気持ちを、トラウマを克服して生まれたことでより鮮烈かつ強いものにするためのものです。それは、あいこに対しても、どれみ達に対しても、そして我々に対しても、です。
人間はいつか死ぬ。
特に年寄りは、そう遠くない将来に死ぬ。
それは自然の摂理であり、仕方のないこと。
人はこの反論のしようのない理屈で自分を納得させ、いずれ来るであろう悲しみに備え、それに耐えようとします。それは不思議なことではありません。人間はそうして生きています。
ですが、それは自分が傷ついて受けるダメージを減らそうと仕方なく自分を納得させているからであり、本当は誰だってこう思っているんです。
「好きな人にはいつまでも生きていてもらいたい。死んでほしくない」
おじいちゃんは当たり前に受け入れてることを言いました。でも、あいこは堪えきれずに泣きました。どれみも泣きました。ぽっぷも泣きました。大人が自分を守るために作った理屈なんて、子供には理解できないから。ですが、だからこそ彼女たちの言葉が、想いが、涙が、理屈なんかじゃ抑えられない人間の本当の感情を表しているんです。子供だからこそ、人間がその理屈の奥にしまってしまっっている本当の感情を素直に出すことができるんです。「いつまでも生きていてほしい。死んじゃいやだ」なんて願いは、単なる子供のわがままなのかもしれませが、理屈で無理矢理納得させても、本当に胸の中にあるのはそのわがままなんです。
先にどれみが善十郎とマユリの悲劇を悲しみ、二人の冥福を祈る場面がありました。そこに描かれたのは、死を受け入れ乗り越えた姿であると言えます。
しかし、この作品の最後に描かれたのは「好きな人には死んでほしくない」という、悲しい死を否定する思いでした。死を受け入れることと、死を否定すること。それらは矛盾しています。しかし、それが人の心です。
死を受け入れ涙し、
乗り越えようとして冥福を祈り、
けれど本当は「誰にも死んでほしくない」と願う。
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以上で今回の観賞を終了したいと思います。これで今までおジャ魔女どれみを観たことがなかったヒトにも、いかにおジャ魔女が素晴らしい作品か解っていただけたと思います。そうですね、特に『かよこちゃん話』と呼ばれる不登校を扱った一連の話なんかは、アニメーションというモノの偉大さを痛感できる、本当に観ないと人生損する程の話ですから、観たこと無い方は是非観て下さい。
ちなみに私は、『おジャ魔女どれみ#(しゃーぷっ)』の最終回を観ていて気づかないうちに掌に涙が落ちていた(マジです)という体験を経験して
「子供が出来たらおジャ魔女を観せる!」
と決心しました。
ああもぉ、一生憑いて逝きついて行きます!
おまけ
このテキスト、実は元になっているのが実際に大学の授業で発表したモノです。日本文学演習の授業だったんですが、その時色々あって「小説じゃなくてマンガや映画でも自由に発表していい」というコトになったので、手を挙げて「おジャ魔女どれみをやります」と言ったんです。その時は周りから笑われましたし、当日も最初は「おジャ魔女どれみドッカ
〜ン!は…」なんて言うとまた笑われました。ですが、発表後半からは全員黙らせることができました。おジャ魔女をナメるな!あと言っておきますが、元は100%真面目なレポートですからね。