『シン・ウルトラマン』
細かい雑感等々




・他にあれこれ言っておきたい事とか、主に自分用メモです。



メフィラス星人の胡散臭さは実に素晴らしかったです。「暴力は苦手です」と言いながら原資はパワーという、『ウルトラシリーズ』が根本的に内包してしまっている矛盾を直観的に伝えてくれる山本耕史の演技には拍手を。



・個人的には特に、「さらばウルトラマン」というフレーズを成立させた功績を評価したいと思います。普通、喋り方としては「さらばだ」となるのが自然なのに、敢えて「さらば」と言う不自然さを、キャラクターとしての説得力が上回ったおかげで悪目立ちせずに済んだと感じました。



・ベーターボックスやメフィラス星人の光線の音は「帰ってきたウルトラマン」の方の効果音で、元々メフィラス星人のデザインはウルトラマンのアンチテーゼがコンセプトですが、そこも対比を意識していたんだなぁと2回目で気付きました。細けぇな、ホント。



・ネロンガの電気にガボラのウランは、もっと社会的問題を絡めて来ると思ったらそうでもなかったのでちょっと拍子抜けですが、それをマジでやると話が長くなるし、そういうのは『シン・ゴジラ』で散々やって二番煎じになるから、省いて良かったと思います。制作がコロナ後だったら、ザラブ星人は未知の伝染病のマッチポンプを仕掛けたんじゃないかなぁと思いました。



・ガボラ戦の顔に迫るドリルを避ける流れ、というかそもそもドリルというギミック自体、グビラを意識してるよなぁと思いました。全く、油断も隙も無い。



・滝がVRゴーグル付けてあれこれやってるのを「本当に凄い事ってこんな感じで行われるのかもしれない」っていうのは、「ギャグにしてはスベってる」みたいな意見も見ましたが、アレってメタ的に「現実に後から非現実を加えて凄い映像を作り上げる特撮」の事を意図してたんじゃないかと思いました。



・6次元(だっけ?)を漂っていたウルトラマンをゾフィーが発見出来たのは「生きようとする意志があったから」と言っていましたが、「数値化出来ない残滓」を巡って目的の元に到達するという点は、浅見の匂いでベーターボックスを探したのと同じ事だと言えるので、あのセクハラ描写にはそんな意味があったのかと思うのは贔屓が過ぎるでしょうか。何にせよ、滝が理論を完成させたのも、ゼットンを殴り飛ばせたのも、帰ってくることが出来たのも、数値化出来ない「諦めない意志」があったから、ってコトですね。



・自分達と比べて遙かに下位存在の地球人類が持つ、数値化出来ず理解出来ないが故に興味を惹かれる何かを感じたから、リピアは神永と融合したし、ゾフィーも地球の処分を取り止めたのでしょう。元のウルトラシリーズには男女の区別がありますが、あの世界で光の星の生命体は個体で完成している気がするので、故に異性という未知の存在に興味を覚えたと思えば、神永と浅見の恋愛を仄めかせる雰囲気にも意味はあったのかな、と。



・そう思うと、色んな人の結婚指輪を目立たせていた意図とか含め、デザインワークスで庵野も触れていたように、あれは恐らく仲間=バディ関係の発展の描き方が上手く行かなかったのだと思いました。でも、話を最後まで見て感じる「そんなに人間が好きになったのか」の意味する内容や、公式キャッチコピーにもある「友情」というフレーズから考えると、異性的な関係はちょっと腑に落ちにくいよなぁ。



・ちなみに、「匂いは数値化出来ない」って最初に聞いた時は「出来るんじゃないの?」と思った人も多かったと思いますが、調べてみると、匂いの「強さ」は数値化出来ても、様々な要素が混じり合った体臭なんかを数値化するのはそう簡単じゃないみたいなので、嘘ではない模様。「薔薇の香り100」「生ゴミの臭い100」は、匂いの強さの数値上は同等、みたいな。



・ヲタクが条件反射でやってしまう「自分ならあそこはああする」ですが、例えばゼットンに全く歯が立たずやられてしまったところについて、ゼットンが迎撃にエネルギーを使ったので火球発射が遅れた滝達が対策を完成させる時間が稼げたという展開にしておけば良かったと思いました。そうすれば、無駄に思えた抵抗も無駄じゃなかったって事になり、最後まで諦めず努力するのが大事という原典「小さな英雄」から抽出した要素がより際立った気がするんですが、そういう説明って無かったですよね?



・その後の映画大ヒットを受けて企画された庵野秀明セレクションの『ウルトラマン』4K上映に関して、せっかくなので庵野が選ばなかった残り35話の中から自分がセレクション上映4本選ぶならと思って挙げてみました。



第2話「侵略者を撃て」

基本中の基本で挙げるのが恥ずかしくなるレベルですが、多分庵野もそう思って外した気がするので、敢えて入れましょう。ウルトラ怪獣の代名詞の一体と言って差し支えないバルタン星人が登場し、特撮映像による「侵略宇宙人」の超常的恐ろしさを見せつけ、夜空を飛び回る空中戦の後に必殺技に「スペシウム光線」という公式名が付けられるという(←ココ超大事)『ウルトラマン』の魅力的な世界の出発点と言える記念碑的な話だと思います。裏話的に言うと、制作順で第1話というのも密かなポイント。


第19話「悪魔はふたたび」

超古代文明人が封印した怪獣二体が復活して街を壊して暴れまわるという、前半の段階で特撮怪獣モノとして当たり回確定。そこからオリンピック競技場で怪獣同士の戦いになり、更に真打登場ウルトラマンに、トドメは掟破りのスペシウム光線3連発正にフルコース。3発目のカラータイマーが青なのは永久不変でお願いします。円谷英二が直接現場でメガホン取ってるという裏側も含め、味わい処満載。


第31話「来たのは誰だ」

庵野が「人間標本5・6」を選んでるのでホラー系で他を選びたいと思うと、ミイラ人間も捨てがたいですが、あの暗い部屋で扉を閉めて振り向いたケロニアの光る目の怖さが未だに忘れられないのです。「人類以外の地球に生息する知的生物による侵略」という要素も、『シン・ウルトラマン』を観た後だと尚更面白い気がします。スペシウム光線が効かない強敵に対して更なる強力光線を使用するというのもヒーローモノとしてはオイシイ話。


第37話「小さな英雄」

ウルトラシリーズの印象的なエピソード特集とかやると、『ウルトラマン』からは「故郷は地球」が紹介される事が多いと思いますが、私的にはこれこそが『ウルトラマン』の、引いては「ウルトラシリーズ」全体の一番大事な核を描いた話だと思います。初代の時点でこんな話が出てるってのが、やっぱり『ウルトラマン』は偉大だという何よりの証左。短いからこそ味わい深いタイトルが多い初期シリーズの中でも、特に格好良いと思います。



・上記の内容も踏まえ、「こうして欲しかった」で一番強く主張したいのは、ザラブ星人戦の空中戦で「ザラブ星人が透明になる→透視光線で見破る」という流れがあったら良かったなぁと思いました。



・『ウルトラマン』で空中戦と言えば真っ先に挙がるのはバルタン星人戦ですが(BGMも一緒だし)、戦闘後にウルトラマンが目から光線を出して隠れてるバルタン星人の母艦を見つけるのは、第2話にして「ウルトラマンってそんな能力もあるんだ凄い!」と印象的に描かれた場面だと思います。



・それから、庵野がセレクションで挙げているダダも姿を消して飛んで逃げるのを透視光線で見破る場面が2回もあるんで、それなら「空中戦」×「姿が見えない」×「透視光線で見破る」という原典の複合的オマージュでそういう場面があっても良かったんじゃないかなぁと強く思った次第なのです。ザラブ星人が姿を変えたり消したり出来るのは作中誰もが理解出来る事ですから、姿を消して逃げようとしても唐突に思う人は居ないので、元ネタ知らなくても問題無いし。


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