第１回
ウルトラマン好きによる
「『シン・ゴジラ』が当たったから
『シン・ウルトラマン』を作ったら
どうなるか？」大喜利

・最初に言っておきますが、庵野秀明と同様に『ウルトラマン』がヲタ人生のコア中のコアにあり、更に思春期に『エヴァ』に触れてしまった身としては、『シン・ウルトラマン』は「観ない」のは己が歩んできた人生を否定するレベルの話です。


・なので、客観的に『シン・ウルトラマン』を評価し、その後に個人的主観全開の評価をしたいと思います。先ずは出来るだけフラットな視点で評価しようとは思いますが、多分無理に決まってると自分でも解ってはいます。それでも、そう謳って挑まずにはいられないのがヲタクの矜持。


・というワケで正直な話、初回鑑賞時の客観的な感想としては、観客は勿論制作者側も『シン・ゴジラ』と比較して観るのが大前提の作品として言うと単純なエンタメとしては『シン・ゴジラ』の方が点数が高いと思いました。


・『シン・ゴジラ』は、初代の特に大事なテーマ部分のみ抽出し、「ニッポン対ゴジラ」と銘打って価値観や視点を現代に置き換え、話を政治風刺劇にアレンジした上で主に「宇宙大戦争のテーマ」と「無人在来線爆弾」を中心としたヤシオリ作戦で「大人の本気の悪ふざけ」として特大のエンタメ的盛り上がりをブッ込む振り切った構成だったと思います。


・そちらと比較すると、『ウルトラマン』は原典が３９話分ある上に内容も実にバラエティ豊かに展開されていたワケで、『ウルトラマン』に真面目に向き合えばあちらより扱うべき要素が増えてしまって焦点がボヤけてしまうのは仕方が無いっちゃ仕方ない。


・『ウルトラマン』及び「（特に昭和の）ウルトラシリーズ」に慣れ親しんだ人にはすんなり理解出来る要素であっても、知識や素養が無くても全員が同じように受け入れられるかと言うとそれは中々難しい話。お約束が一見さんにはちょっと壁になってしまうジレンマなのは、歌舞伎等の伝統芸能と同じ永遠の仮題ですわな。


・なぁんて思ってたら、今のところ（公開１ヶ月後あたり）興行成績は『シン・ゴジラ』より良いペースで、感想や評価も肯定的な声がほとんどだと見受けられ、己の見る眼の無さを改めて恥じた次第ですごめんなさい。「嬉しい誤算」、私の好きな言葉です。


・ちなみに当初から出ていた否定的な感想は主にセクハラ・恋愛的要素に集中してる感があり、そこは私もちょっと肯定的な評価がし辛いと感じましたが、それはまぁいいでしょう。ウルトラマンが神でないのと同様、どんなに良い作品でも欠点はありますよ。


・で、自分なりのフラットな視点での評価は置いておいて一人の『ウルトラマン』好きとして感想を言うなら、冒頭の言葉に尽きると思う次第です。


・演者のコメントで「壮大な因数分解」「一度じゃ理解し切れない」みたいなのがあった通り、何層にもなって複雑な要素が絡んだ物語ではあるのですが、それらを全部紐解いてバラしていくと最後に出てくる核は「ウルトラマン大喜利」だったんじゃないかなぁと。


・ＯＰのタイトルロゴから始まり、「ゾーフィ」「１兆度」に致るまで、とにかくあれこれ屁理屈捏ね繰り回してウルトラマン要素を詰め込めるだけ詰め込む大喜利はヲタクとして超楽しいに決まってます。



・数々のカットから効果音に致るまでとにかく、『ウルトラマン』を知っていれば知ってる程ニヤニヤ出来る要素満載。ザラブ星人戦の右手を痛がる仕草とか「それを外すなんてとんでもない」要素をやるのは勿論楽しいし、パゴスとネロンガとガボラの身体が似ているのは、元々は大人の事情で着ぐるみが使いまわしだったのを後付けでそれらしい設定にするとか（オマケでグビラ戦のドリル要素も入れる）、ヲタクだったら思いついたら思わずニヤつかずには居られまいて。


・この作品について「大喜利」と言いましたが、『ＩＰＰＯＮグランプリ』に代表されるような「大喜利」って基本的にはお笑いのジャンルにカテゴライズされますが、そもそもお笑い自体が人を笑わせる面白い事を生み出す為に芸人達が必死で大真面目に取り組んでいる「大人の本気の悪ふざけ」と思えば、『シン・ゴジラ』のヤシオリ作戦同様、この作品を作った人達は真面目に一生懸命に「ウルトラマン大喜利」をやったんだなぁと何度も反芻した上で思い至ったのです。


・物語としての評価は、構成する様々な問題や解釈が難しい色んなテーマもちゃんと『ウルトラマン』並びに「ウルトラシリーズ」と向き合えば自ずと集まって来る要素なワケで、真剣にリスペクトすればああいう物語としての形になるのは十分納得行く話だったと思います。ただまぁ、それは私に元々ウルトラマンの素養があったから感じられた感想で、一般的にはどうかなぁと思ったので、当初『シン・ゴジラ』より低いって思っちゃったんですけどね。


・『ウルトラマン』が大好きでリスペクトしている人達の、『ウルトラマン』への愛と誇りを懸けた真剣で大真面目な「ウルトラマン大喜利」の結実が『シン・ウルトラマン』という映画というのが、私の最終的な感想なのでした。

目次に戻る

テキストに戻る　　　　トップに戻る