レ
イ、
ぽかぽかの向こうに
・綾波レイが、『エヴァ』を、引いては日本のアニメを代表するヒロインキャラであることに異論を挟むことは難しいでしょう。綾波レイの存在の偉大さは、旧世紀のアスカ派は嫌というほど身に染みてます。
・そんなこんなで、いくらアスカ派とは言えレイに関しては何かしら言っておかないとなぁと思うので、綾波レイについてちょいとつらつらと。
・旧劇にしろ漫画版にしろ、人類補完計画が失敗するトリガーになったのは、綾波レイの碇シンジに対する想いでした。最終的に拒否を選択したのはシンジとは言え、選択肢を与えたのはレイに、大袈裟に言えばリリスに他人に対する興味があったからであり、そういう意味でもレイは旧劇及び漫画版の『エヴァ』の世界の行く末を決定付ける役割を持った最重要キャラと言って差し支えないと思います。シンジがソフトで、レイがハード、みたいな。
・では新劇のぽか波さんはどうかと言えば、『破』終了時まではともかく、『Q』以降は物語における決定的役割を担っている程の重要度では無かったんじゃないかなぁと思う次第です。アスカ派の負け惜しみではなく。
・それは多分悪い意味ではなくて、新劇場版が「碇シンジの物語」であるが故に、綾波レイも、アヤナミレイ(仮称)も、シンジの世界を構成する人間の一人であってそれ以上に過剰な役割を持たせる必要は無いってことだったんじゃないのかなぁと思いました。
・『破』で綾波を助ける為に覚醒して「来い!」と我々の度肝を抜いたシンジさんでしたが、『Q』のアヤナミレイ(仮称)は自分が助けた綾波レイでは無いとショックを受けました。同様にアヤナミレイ(仮称)の方も、シンジが自分を綾波レイと認識しないので「綾波レイじゃないなら、自分は何者なんだ?」という疑問を持ちます。
・ヴンダー上のアスカ戦で「こんな時、アヤナミレイならどうするの?」という知らない誰かの答えを求める姿は、ヤシマ作戦後に「こういう時、どんな顔すればいいのかわからないの」と自分自身の感情と向き合った綾波レイとの違いが感じられて、中々に印象的でした。
・ついでに言うと、それに対するアスカの「知るか!あんたはどうしたいの!?」という返しも大事で、後から考えるとここがアヤナミレイ(仮称)が代わりの誰かでは無くなる大きなターニングポイントだったワケですな。
・その後はそっくりさんとして第3村で様々な人と関わって色々な経験を重ねる中で、彼女はシンジに名前をつけて欲しいとお願いします。アスカの「綾波シリーズは第3の少年に好意を持つよう設計されてる」という言葉に対して「それでもいい」と受け入れ、碇シンジが好きでシンジに幸せになって欲しいと思う自己の意志を肯定する事で、「綾波レイの代わり」では無く、「アヤナミレイ(仮称)」という曖昧な存在でも無く、一人の人間としての個が確立されたのだと感じました。
・そんな彼女に対してシンジが綾波レイ以外の名前を考えられなかったのは、「代わりはいるもの」を「綾波は綾波しかいない」と否定したような意味ではなく、「君は「綾波レイの代わり」じゃない」「君は、他の誰でもなく、綾波レイだ」という肯定的な意味合いに感じました。
・実際彼女も、シンジが自分を「綾波レイの代わり」ではなく、一人の人間として向き合ってくれた事を感じられたから、「ありがとう」と笑って最期を迎えられたのだと思います。
・個人的に、記憶と人格のどちらに魂があるかと言われたら、人格の方だと思います。知識や記憶は大事だけど、その情報に対して何を思いどう感じるかという事こそがその人の魂の形を表していると考えます。これに関しては、漫画版でレイとカヲルが互いを似ていると言った際の返しが実に分かり易いので、是非そちらを参照していただきたいです。返す返す、漫画版凄ぇな。
・ちょっと話がズレますが、記憶を失った人が、新しい人格として生きて、その後に記憶が甦った際に以前と現在の記憶と人格が統一されたとして、後の人格や記憶は嘘や幻だったかと言えばそんなことはなく、それを統合してのその人になる、てな話は多くの人がどっかで1度は聞いたことある気がします。てか、それって旧劇の綾波も3人目がそうだったからゲンドウ裏切ったワケですし。
・つまり私としては、彼女が「綾波レイという知らない存在」の代わりになろうとする事をやめて自分の意志で生きようとした姿に、その魂の有り方をシンジが綾波レイであると感じられたから、シンジは「綾波しか思い浮かばない」のではなかったのかなぁと思った次第なのです。
・代わりを目指す以上はどうやっても代わりでしかなくて、「綾波の代わりはいない」からこそ、綾波レイのコピーになろうとしない事こそ綾波レイという存在になる為に必要な事という、逆説的というか、自分で言っててよくわかんない話ですが、まぁ何となく感じ取って下さい。
・彼女から過去に囚われる事なく未来に向かって歩き出す事が結果的に過去を受け入れる事になる、という生き様と想いを最期に託された事は、シンジが自分の落とし前をつける決心を後押ししたのは間違いないと思います。そういう意味では、やはり綾波レイは『エヴァ』という物語の中で、シンジの旅立ちに必要なキャラクターなのでしょう。
・てなワケで、大道具倉庫でロング綾波が「つばめ」という人形を抱いていたってことも、第3村でそっくりさんが得たものは消えずに受け継がれていると考えていいんでしょう。マイナス宇宙では過去に起きた全てが包括されて存在しているって考えれば理屈は通りますし、若干都合の良い話かもしれませんが、その方が皆にとって良い結末と思うので、野暮は言うまい。
序文
旧劇について
新劇場版について
旧作と新劇の比較について
アスカについて
ミサトについて
音楽について
最後に
オマケ