旧劇の価値は



・『シンエヴァ』を観た後で、改めて旧劇を観返して思った事や比較について、つらつらと。


・ド頭に結論めいたことを言うようですが、『シンエヴァ』は勿論『旧劇』にしても、既存のアニメの概念を大きく超越するような壮大な作品を目指している姿勢は感じられますが、風呂敷がデカ過ぎてちょっと受け止めきれない感じもあって、改めて『貞本エヴァ』は実に良くまとまって素晴らしかったなぁと感心する次第。愛蔵版の表紙絵を見ると、やっぱり貞本の絵が一番好き。


・『EOE』で、シンジが綾波(orリリス)の手を握って「ありがとう」と言うシーンがあってちょっと震えました。覚えてなかったー!


・『シンエヴァ』で最後の戦いに向かうシンジには、『EOE』と同じくプラグスーツではなく制服で行って欲しかったです。初搭乗時やゼルエル戦と同様に、大事な場面のシンジにはあの制服が似合うと思うんですよ。


・『EOE』で最終的にシンジは他人が居る世界を望みますが、何故シンジが他人が存在する世界を望んだのかが、二十五年前から今に至るまでイマイチ納得出来ないです。物語としては正しいかもしれないけど、それまでのシンジの描かれ方や心情から考えると、あそこでほぼ逡巡無しに「これは違う」と言えないと思うんです。


・ミサトのチョーカーがあったので「ミサトとの絆」があったからと言えばそれまでですが、だったら初号機がベークライトで固められて乗れない時に、体育座りで不貞腐れてないで漫画版みたいに足掻いてくれないと、結局シンジ的には大した事なかったように見えて、結果的に補完を拒否する説得力も弱く感じられます。


・その点で言うと、旧劇と比較してってのもありますが、貞本エヴァはシンジの決断の理由とその後の綾波とのやりとりがとても丁寧で、ちゃんと納得できる形だったと思います。やはり『貞本エヴァ』は素晴らしい(2回目)。


・あと、旧劇でミサトに想いを託されたシンジが、『シンエヴァ』で「ミサトさんの背負ってるものを半分受け持つ」と言ったのが対になってると考えてみると、また味わい深い。


・エヴァでは印象的な展開や場面を意図的になぞる演出が何度も見受けられますが(新劇例:シンジのヤシマ作戦とヤリ抜き)、全体を通して個人的に印象深いのは旧劇の弐号機とカスパー。特にエヴァ全編を通して一番「上手い構成だなぁ」と唸らされたのが、旧劇のMAGIの「カスパー」の選択です。


・かつて使徒に侵されるのを跳ね除けて「女であること」の矜持を守ったカスパーが、最終的に女として娘よりも男を選ぶという皮肉な展開は、実に御見事。リツコにしてみれば「裏切られた」かもしれませんが、カスパーの根本的な思考原理が「女であること」という点からすれば理にかなっているという、ミステリのトリック説明されて感心した時の知的興奮みたいな快感がありました。


・それから、使徒に関して最初の印象深い場面であるサキエルがデカいミサイルを片腕で受け止めるのを、弐号機復活でなぞったのもインパクトがありました。人類の敵である使徒への攻撃が弐号機で繰り返されるというのは、ネルフ側で観ている受け手はともかく、あの世界では「使徒=エヴァ=人類の敵」という図式になっているのを強く表していて実にシニカル。


・加えてBGMが、明るく爽快感があってアスカの華麗な復活劇を彩っているのに、曲名が「偽りの、再生」その後の皆のトラウマを暗示していて、色々と捻くれてるなぁと、ゲンドウのように口元で組んだ手の下でにやりと笑いたくなります。

序文
新劇場版について
旧作と新劇の比較について
綾波について
アスカについて
ミサトについて
音楽について
最後に
オマケ


テキストに戻る    トップに戻る